取材記事
週刊BCN(BUSINESS COMPUTER NEWS) 2008年6月9日号
「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手 49
マイクロテック・ニチオン(上)
理化学機器メーカーのマイクロテック・ニチオン(本田周社長、千葉県船橋市)は、営業支援システムを大幅に強化した。バックエンドの顧客管理システムと、ウェブを使った集客システムを組み合わせたもので、限られた営業リソースの効率化につなげるのが狙い。千葉県の関連団体・千葉県産業振興センターを通じて、NPO 法人・千葉県ITコーディネータ理事長の浅井鉄夫・ITコーディネータが指導に入った。
マイクロテック・ニチオンは役員、社員合わせて20人余り。研究開発型の企業で、医療器具製造の日音医理科器械製作所の分析器機開発部門が1989年に独立した会社だ。大学や国公立の研究機関、医薬・食品メーカーの研究部門などで使う理化学機器を製造、販売する。
例えば、生物のDNAや蛋白の抽出、組織の破砕などに使うホモジナイザーと呼ばれる理化学機器。あるいは化学実験や科学捜査で使う試薬・ルミノールなどの発光量を測定するルミノメーターといった専門的な機器を多数開発、製造する。
技術志向で社員数も限られているため、営業面では苦労することが多かった。このため少しでも効率化を図ろうと、早くからITを業務に採り入れてきた。インターネット黎明期の頃からホームページを開設して情報発信に努め、社内LANや電子メールなど一通り揃えた。理数系の腕に自信があるスタッフが多いためか、ほとんどが社内で構築したものである。顧客管理に使うデータベース(DB)管理ソフトも自前でつくった。
しかし、多くがITに強いスタッフが自発的につくったものが散乱し、システム全体の整合性を保って継続的に運用する仕組みが弱かった。担当者が異動や退職すると、とたんに管理者不在の状態になる。ホームページの更新は滞り、顧客DBなどを支えるサーバー群は動作不良を起こす。「社内システムはまさに崩壊寸前」(本田雅秀・専務)の憂うべき状況だった。
運用上も問題が多かった。展示会で集めた潜在顧客のデータは営業担当者レベルの表計算ソフトで管理するパターンが増え、顧客DBにうまく集まらない。 DBのデータ精度が落ちると営業にも役立ちにくくなり、さらにデータの集まりが悪くなるという悪循環。
危機意識を強く持った同社は、千葉県産業振興センターに相談を持ちかける。IT活用型の経営改革をテーマとした県の補助事業に応募。見事に採択され、 2007年初夏、浅井鉄夫・ITコーディネータを紹介される。ノウハウを効率よく社内に蓄積するため、情報システムの担当者も置いた。マイクロテック・ニチオンを訪れた浅井ITCは、「ITの活用度合いは高いが、個別最適にとどまっている」と、直感した。