臨床細胞・組織試料(ミニ肝臓)作成装置
生体組織スライサー
弊社は肝臓を生きたまま小さな切片として切り出す「ミニ器官作成用自動スライサー」の特許実施権を、(株)生体科学研究所から取得いたしました。
ご存じのように、肝臓は薬物代謝機能などを持ち、薬剤の開発や治療のカギを握る重要な臓器であります。これまでは切片とする段階で細胞が死んでしまったり、組織としての機能が損なわれてしまい、生体内と同様の働きを試験管内で再現することが出来なかったため、薬物代謝機能などを調べるには動物実験などに頼らざるをえませんでした。
自動スライサーの方は、24時間後も細胞の形が崩れておらず、正常な活動を続けている。
この「ミニ器官作成用自動スライサー」を用いれば、動物の犠牲を最小限に抑えられるうえ、試験管内で手軽に人間の肝機能を評価できるなど、薬剤開発分野などでの有用性ははかり知れません。
ミニ器官作成用自動スライサーによって作られた5mm四方の切片は、小さいながらも薬物を選択的に取り込み、代謝、排出する肝臓の組織的な機能を保つという、いわゆる「ミニ肝臓」であります。切片の厚さは約2mm、肝機能を担う最小単位ですので、1mm立方サイズの肝小葉を丸ごと切り出せる厚みです。
厚さ2mm、自動スライサーで切り出した「ミニ肝臓」。連結固定などをせずに軟らかいままスライスするため、血管の穴もつぶれることなく原型をとどめています。
これまで、肝臓を生きたまま切り出す上で大きな障害となっていたのは、スライスするときに組織に与えるダメージでした。スライスには、数mmの厚さのステンレス製の刃用いられてきましたが、金属刃であるために試料を切るときに微量な電流(損傷電流)が流れ、それが細胞群に伝わり致死的な影響を与えていました。
そこで自動スライサーでは、その問題を解決するために、損傷電流を発生しないセラミック製の刃を導入しました。しかし一方で、セラミックには、強い力がかかると割れてしまうという脆さがあるため、刃の形を円形にして、刃先にかかる力を分散させたうえ、モーターで刃を一定速度に回転させることによって、その強度を高めるなど工夫が施されています。
厚さ0.25mmの極めて薄いセラミック刃は、ジルコニアの粉を数十気圧かけて固めて焼き、フッ素加工をほどこしたものです。試料は各刃間の厚さにスライスされます。
また、スライスの際に、試料を上から押さえて固定するために細胞をつぶしてしまうという従来の問題点を、セラミック製の刃を数mmおきに5〜10枚並べ、両端の刃で挟み込んで動かないようにすることで改善しました。更に刃を多く並べたことにより、一度の切断で多数の切片を作成することが出来ます。
肝臓の生体機能を維持した切片は、薬剤開発の効率化にも役立ちます。将来的には、肝臓の切片から薬の有効性や副作用を判定し、患者さん一人一人により適した薬剤を選択していくことも可能になるかもしれません。