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三つのホモジナイザー ヒスコトロン・クライオプレス・スマートの比較 (1)
2008年12月
我が社の技術の一つであるホモジナイザーについて一考したい。
液中におけるジェネレーターの高速回転による分散・乳化・破砕能力を持った超高速万能ホモジナイザー「ヒスコトロン」、容器及び試料を液体窒素にて−190℃近くの温度まで凍らせて、容器中の試料を凍結破砕させる「クライオプレス」、そして超音波のエネルギーで分散・乳化・破砕を行う超音波ホモジナイザー「スマート」のそれぞれの原理・特徴・機能などを整理し、目的にあった機種選定・或いは複合的な利用法などを考えてみたい。
予算的に言えば、何れも30万円台で、少し機能を追加し又付属品を増やしても50万円台となるので、大きな差はないが、やはり目的にあった装置の選択が必要である。そこで、3つのホモジナイザーの破砕原理とその特徴を紹介すると共に、ユーザーの方々からは機能的に足りない部分のご指摘を頂き、新たな知財を共有する事が出来れば、革新的なブラッシュアップとなると思う。
高速回転によるホモジナイザー「ヒスコトロン」は、内刃と外刃によって構成されたジェネレーターの構造によって破砕が行われる。つまり、ジェネレーターの構造が悪いと破砕が不十分となることがある。Generatorという言葉は、機械要素の意味としては「発電機」であり、正にジェネレーターの構造は発電機の構造に似ている。
発電機の場合は、高い位置に蓄えられた水や高圧蒸気の力で回転体が水車のように力強く廻る事で、回転体に連結したダイナモで電気を発生させる仕組みであるが、「ヒスコトロン」の場合は、それとは逆で、ダイナモの位置にあるモーターに電気を加えるとモーターに連結したジェネレータが回り、周辺の液体を吸い込みはき出す作用が起こる。
もう少し正確に言うならば、液体中に置いたジェネレーターの内側回転体がモーターの力で回転することで、その周囲の液体が動き出し、回転体を保護する外筒に開けられた細い穴を含めた構成の中で、液体の吸引・吐出(回転体の下方から吸引、外筒の細い穴から吐出)が起こる。
容器の中の液全体ではジェネレーターを中心に液体の循環が起こり、モーターの回転が早くになるにつれ乱流ともなる。回転をしていない時に、容器中で上下に分離していた油と水も、この回転により動き出し、不規則にジェネレーターに吸い込まれ、外筒の細い穴から抜け出す時に、外筒の内径よりも僅かに細い回転体との間で油も水も細かく切られ一瞬微粒化される。
液体中に僅かな量の液体は、条件さえ合えばそのままの状態を保つことが出来る。つまり、W/OやO/W等のエマルジョンを作ることが出来る。回転数が高すぎることで折角出来た微粒子も、激しい粒子同士の衝突によりくっ付き出してしまう事があるので、界面活性剤等の選択を含め注意が必要であろう。
化学的な重合反応にも効果的である。「ヒスコトロン」は、モーターもジェネレーターも小型なので、小さな反応容器で小規模に実験するのに適している。また反応容器の蓋には、所狭しと様々な穴が開けられているが、小型のモーターとジェネレーターは場所を取らずに配置できるので他の機能を支える部分の妨げにならない。
固体の破砕・分散も液体の流れの中に固体が吸い込まれ回転体(内刃)と外筒(外刃)の先端部分で粗砕され外刃の細い穴を抜け出す時に鋏で切られるように30,000rpmの切断により微細され容器全体に分散される。
残留農薬等の分析の分野では、動植物の試料を、「ヒスコトロン」で直接或いはフードプロセッサーで粗砕し、更に「ヒスコトロン」で農薬を充分抽出できるまで破砕し、容器内の試料を均一化する機能を備えているため、多くの研究機関や検査センター等で利用されている。
砂や金属等の硬い微粒子を液体中で破砕分散している事例も幾つかはあるが、ジェネレーターも削られていくので長持ちしない。これしか他に方法はないと言う事で利用いただくケースもあるが正直に言って無謀である。
「ヒスコトロン」の特徴は、回転体(内刃)と外筒(外刃)の間隙が、他の製品に比べて狭い事である。この事が、エマルジョンを造る場合にも細胞を破砕する場合にも大変効果的に働き、良い結果を出す事が出来る。特に動植物の組織から酵素やmRNA等熱変性しやすい物質を取り出す時には短時間で破砕でき発熱が少ない。また「ヒスコトロン」には世界最小のジェネレーターがあり、マイクロチューブの僅かな試料(昆虫・水棲小動物・マウス等の微小器官)の細胞破砕に効果的である。
次回はクライオプレス、その次はスマート(超音波)を含め3つの方法を比較表に纏めたい。
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