抗酸化作用測定法
ルミカウンターによる抗酸化作用測定法
はじめに
呼吸で体内に取り込まれた酸素の約 3% は電子伝達系でのエネルギー代謝時に還元されスーパーオキシドアニオン(O2-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロ キシルラジカル(・OH)および一重項酸素(1O2)などの活性酸素に変わります。これらの活性酸素はたんぱく質を変成させたり、DNA の制癌遺伝子を破壊して癌化の原因となると指摘されています。
一方、人体には スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)などの活性酸素を消去する酵素やアスコルビン酸(ビタミンC)や α-トコフェノール(ビタミンE)等の抗酸化物質があり、これらの働きで体内の活性酸素は除去されます。近年、カテキン、イソフラボン等のポリフェノール類などの抗酸化力を持つ物質やその補助をとして働く物質の探索が注目されており、その能力の解析が進められています。ここでは抗酸化力測定法としてラジカル消去能を化学発光を用いて測定する方法をまとめました。
Fig.1 活性酸素の発生及び除去
原理
化学発光法
化学発光は、発光基質の酸化により引き起こされます。ルミノールは鉄等の金属イオンや錯体を触媒とし、H2O2により酸化されて 3-アミノフタル酸ができます。このとき、まず励起一重項状態となり、これが基底状態になるときに青く発光します。
ルミノール反応
抗酸化力の評価
発光基質の目的物質による発光の酸化阻害を測定することで、目的物質の抗酸化能を測定することが可能です。抗酸化力の指標として酵素反応などを利用して発生させたラジカルに対するラジカル消去能を調べる方法があります。また、ESR(電子スピン共鳴)法などでは発生したラジカルをDMPOで捕らえ、それをラジカル強度として測定しています。そのため、間接的にスーパーオキシドの消去を追跡しているのですが、発光測定では直接活性酸素が開裂したときに生じる発光を測定しているので、より直接的な測定法といえます。
ヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼの基質−酵素反応によって生じた活性酸素の一種であるO2-をルミノール、ルシゲニンル、またウミホタル・ルシフェリン誘導体などで発光させ、ルミカウンターで発光量を測定します。このとき抗酸化物質を未添加での発光量をA、添加したときの発光量をBとして阻害率(阻害率(%)=1−B/A×100)を算出します。この阻害率が高いほど抗酸化作用が高いと推測できます。また、 SODでの阻害率を基準として試料の単位重量当りの阻害率を SOD 相当量に換算することで定量的な測定が可能になります。
Fig.2 抗酸化作用測定原理
ヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼ系での O2- 生成
抗酸化力の測定例
ヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼ反応よりO2- 生成し、発光試薬を用い発光させます。ここに試料として抗酸化物質を添加し阻害率を求めます。
■試薬
- KH2PO4 Buffer (0.1M-KH2PO4 −0.05mM- EDTA)
- Hypoxanthine 溶液 (3.6mM-Hypoxanthine/KH2PO4 Buffer)
- Xanthine Oxidase 溶液 (100μg/mL-Xanthine Oxidase 溶液)
- 発光試薬
■測定
ルミカウンターを用いて測定を行います。高感度微弱光測定機ですので窓際などの直射光の入る場所を避け湿気に注意してください。NU-700ではマイクロチューブでの測定が可能です。またNU-2500ではさらに攪拌機能があり、一定間隔で反転し回転軸の中心を僅かにずらした攪拌装置によりサンプルを効果的に攪拌することができます。
Fig.3 ルミカウンター NU-2500
(A) 抗酸化物質 未添加マイクロチューブに
- 発光試薬
- Xanthine Oxidase 溶液
- KH2PO4Buffer
を分注し装置にセットします。Oxanthine 溶液を自動分注器より分注し一分間の発光積算値を測定します。
(B) 抗酸化物質 添加マイクロチューブに
- 発光試薬
- 抗酸化物質
- Xanthine Oxidase 溶液
- KH2PO4Buffer
を分注し装置にセットします。 Oxanthine 溶液を自動分注器より分注し一分間の発光積算値を測定します。
応用分野
抗酸化力測定及び活性酸素の測定は以下分野で用いられています。
- 新規機能性食品の研究開発
米のパーオキシダーゼ活性の測定
ヒエ子実に含まれるラジカル消去成分測定
発芽・発根に及ぼす過酸化水素の影響
植物性乳酸菌による生理活性作用
ポリフェノール含有食品の商品テスト - 医療分野
活性酸素の生体内作用機構の解明
生体内酸化ストレスの測定
灌流系における NO 測定
肝障害 Kupffer 細胞の活性酸素産生能
漢方薬の抗酸化力の定量
金属と血中活性酸素の相互作用 - 分析化学分野
発光試薬の開発
測定法の開発
分子プローブの開発 - その他
光触媒反応により生成する活性酸素の測定
魚類好中球の活性酸素産生能の魚種間の比較
化学発光による牛乳房炎の早期診断
またルミカウンターは活性酸素の測定以外にも以下のような様々な用途に用いることができます。
- レポータージーンを用いた解析
レポータージーンを用いた遺伝子の転写、発現機能の解析(プロモータ、エンハンサー等の活性解析)
1. ルシフェラーゼアッセイ
2. リン酸フォスファターゼを用いた解析
3. β-ガラクトシダーゼを用いた解析 - ATP測定による菌数及び細胞数の測定
1. 食品、排水、土壌中等のバイオマスの測定
2. 食品工業の作業現場における衛生チェック
3. 細胞中の ATP 測定による細胞の活性検討
4. バクテリア、酵母等の微生物の細胞数測定
5. 種子、植物などの生育度測定 - NAD(P)H系の発光シグナルの測定と解析
発光細菌由来のルシフェラーゼは、還元型フラビンモノヌクレオチドと炭素鎖 6〜8 の長鎖アルデヒドを酵素存在下、長鎖脂肪酸に酸化反応を触媒し、発光が生じます。1. NAD(P)H の定量
2. FMN の定量
3. 酵素免疫測定法 - 化学発光による応用
ルミノール、ルシゲニンなどによるケミルミネッセンス1. 化学発光による食細胞貪食能試験
2. エクオリンによる Ca2+ 濃度の測定
3. 化学発光による Ach(acetycholine)の定量・・・・等
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