ゼータ電位測定装置 ZEECOM原理と特長
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画像解析によるコロイド粒子の分布測定 本田 周
1.はじめに
乳剤、塗料、染科、顔料、セメントなど、コロイド粒子を用いた製品は多いが、それらの品質を維持するにはコロイド粒子の性質や挙動を正確に把握しておく必要がある。
しかしコロイド粒子は周囲の電荷環境などによって分散、凝集するため、そのモニタリングは困難であった。
(株)マイクロテック・ニチオンでは、顕微鏡でコロイド溶液内のコロイド粒子の挙動を効率的に提える検査システム「ゼータ電位測定装置:ZEECOM」を製造販売しており、 コロイド粒子を便用する工業プロセスの品質管埋に実績を上げている。
以下に本器の測定原埋、装置の特長そして応用例などを解説する。
図1 反発しあう電位の高いコロイド粒子 |
2.コロイド粒子の性質とゼータ電位
コロイド粒子の分散・凝集メカニズムについては幾つかの理由があるが、その一つにゼータ電位の存在が知られている。
物質にはそれぞれ固有の電位があるが、コロイド粒子の場合、周囲の液体の状態によって見かけの電位が変わる。この見かけの電位をゼータ電位といい、一般にゼータ 電位が高いと粒子は分散し、低いと凝集する性質を持つ(図1, 2)。
一方、コロイド溶液に電極を揮入し直流電圧を加えると、コロイド粒子は固有の電荷と反対の極性の電極へ向かって泳動する。コロイド粒子のゼータ電位はその泳動速度に比例するので(Smoluchowskiの公式)、泳動距離と時間を計測 してゼータ電位を求めることが出来る。そして、そのゼータ電位を制御する事によって、コロイドの凝集・分散具合を調節することが出来る。
3.電気の動きとコロイドの挙動
コロイド懸濁液にはペーストのような濃い物(たとえば セメント)から、湖の濁りの原因となる粒子のような薄いものまである。どのような場合であっても、それぞれのコロイドは荷電していて、これによって隣接する粒子間に相 互の静電的な反発力が形成される。もしこの荷電が十分に強ければ、コロイドは分散し、懸濁状態を維持する。一方、この荷電が滅少したり、なくなったりすると、コロイドは直ちに凝集しだし、互いに結合したり、マトリックスを形成する。
粒子の電荷は、その粒子を取り巻く液体のpHやイオンの種類を変えることでコントロールできる。その他、もっと直接的な方法としては、コロイドの表面に直接吸着し、その性質を変えるような界面清性剤を便う方法もある。
4.1 電気二重層
荷電したコロイドの近辺のイオンの状態を視覚化し、どのようにして電気的な反発力が起こるかを説明するのに、二重層モデルが便われる。
例として、液中でコロイドが陽イオンに及ぼす影響について考えてみる。負のコロイドによる引力で陽イオンのいくらかはコロイドの表面にしっかりとした層を形成する(スターン層)。更に、陽イオンは負に荷電したコロイドに 引きつけられるが、それらはスターン層や負のコロイドに 到達しようとする他の陽イオンによって反発されることになる。この動的な平衡状態によって陽イオンによる層(拡散層)が形成される。
この拡散層における陽イオン濃度は、コロイドの表面近くでは高く、距離が離れるにつれて小さくなり、最終的には液中の陽イオンの濃度に等しくなる。陰イオンはこれとは反対に、粒子の負の電荷によって反発するため、粒子の 表面近くではほとんどなくなっている。スターン層において粒子に付着したイオンと、拡散層における荷電層を電気二重層と呼び、この層の厚さは液中のイオン濃度に依存する。
4.2 ゼータ電位
荷電粒子は、電圧の掛かった液体中において一定の速度で移動する。この現象を電気泳動と呼び、粒子の移動しやすさは懸濁液の誘電率と粘度に関係し、また移動している粒子と液との境界部における電位差に関係している。この境界部を滑り面といい、スターン層と拡散層が相対する部分であると定義されている。
スターン層はコロイドにしっかりと付着していると考えられており、一方拡散層はそうでないと考えられ、その結果この両層の間の接合部における電位差は、コロイドの動きやすさに関係しておりゼータ電位と呼ばれている。
(写真1) コンパクト・ゼータ電位測定装置 ZEECOM
5.ゼータ電位測定装置
弊社では、このゼータ電位を誰でも簡単に操作できる装置にするにはどうすべきかを検討してきた。
その結果、写真1に示す弊社の持つ両像解析技術を応用し、自動測定が可能な上に、モニター上でコロイドの動きを確認できる画期的なゼータ電位測定装置「ZEECOM」を開発した。 画像処理システムを用いた「ZEECOM」の特長は以下の通りである。
- ビデオに泳動画面を保存すると、その画面から何回でも測定が出末る。
- 同時に多数の(異なる物質も含め)ゼータ電位を測定できる。
- 自動測定している様子を、画画で確かめられる。
- ストップウォッチと目視による人為的誤差を除くことが出来る。
- 測定結果はデータ保存され、解析に利用できる。
6.製紙分野における品質管理への利用
コロイド粒子や繊維の歩留まりは、ゼータ電位のコントロールによって高くすることが出来る。種々の製紙用添加 剤の効果や、紙の繊維そのものの物埋的特性を知る上での指標値も果たすことが出来る。
どこの処理プラントにおいても凝集を保証するゼータ電位は±10mVの間にあるが、もっとも良い値はそれぞれの試験プラントを用いて実際の運転経験から出されたものであろう。コントロールは迅速混合槽から採取したサンプルのゼータ電位を計ることで行う。もし、測定値が目的のゼータ電位より高ければ、凝集剤を増量することになる。
本Webページに記載されている弊社製各種装置の用途例(方法)には、特許が存在する場合がございます。実際に使用される場合にはその用途についての特許情報を十分に確認された上で使用されることをお勧めします。